ホモサピエンスにとって善とは何か。そして悪とは何か。この世界のすべてを、何もかもを理解し、説明しようと試みてきたわれらホモサピエンス。

より大きな力強い物語を神話を哲学を虚構を編み込んで秩序を形成してきた。必要なことはこのホモサピエンスをできるだけ大きなストーリーの中に包含し組み込んでいくこと。

そのストーリーが分裂を始めている。世界は連帯や寛容や多様性からふたたび、距離を置き始めようとしているかのようである。

そもそも人間の行為の基準は善や悪で推し量るような、そのような度量衡が必要なのではなくて、行為の源泉は生き延びようとする動物としての根源性に根差しており、それはあたかも自然法則なのだと思い込んでいる節がある。

より多くの人々がそれを信じればそれは新たな神話となるように。力を持つものはそれを持っているだけの理由があり、それは神が授けたものなのだという、そんなふうに。よくよく考えれば歴史はそのように刻まれて来たし、これからもまた、刻まれていくのだろう。

善と悪の均衡は、均衡であり続けることを願うしかない、と思う。